佐世保店の大島です。京都大学の研究グループの内容が興味深かったので転載します。
音のくる方向を正確に知るための神経のしくみ:音源の位置を特定する神経細胞では興奮の始まる場所が音の周波数に応じて最適化されている。 |
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この研究成果は11月30日の「ネイチャー」誌のオンライン版に掲載されました。 研究成果の概要 聴覚では音の始まりや終わり、音の強さや、周波数(音の高さ)などの情報を利用することにより、我々の脳に音源のイメージを形成している。脳の神経細胞はナトリウムチャネルを軸索に集積することにより興奮し、これらの聴覚情報の伝達を行う。これまで神経細胞の興奮は軸索の細胞体近傍(軸索起始部)で起こると考えられてきた。聴覚を担う神経核には音の周波数に対応した機能局在があり、それはイオンチャネル分布の違い、シナプス形態の違い、神経細胞形態の違いなどをともない、周波数帯域毎の神経細胞機能を最適化している。今回明らかにしたことは、左右の耳に到達する音の時間差(両耳間時間差)を検出し音源の位置を特定するはたらきを持つトリの神経核(層状核)において、ナトリウムチャネルが周波数帯域依存的に軸索に分布し、この結果、細胞内で興奮の起こる場所が周波数帯域毎に異なることである(図1)。つまり、ナトリウムチャネルは低い音を処理する細胞では細胞体の近くに大きく集積し、高い音を処理する細胞ほど細胞体から離れて小さく集積している。こうしたナトリウムチャネル分布の違いは周波数入力に応じて細胞が安定して興奮し(図1)、両耳間時間差を正確に検出するために最適化された結果であることを明らかにした。今回の結果は、軸索が従来考えられてきたように単に情報を伝えるだけのものでなく、極めて精巧な情報処理を行うものであり、このことが脳機能の発現に重要な役割を果たしていることを示している。この新たな知見により、我々の複雑な脳機能についての理解が今後さらに進むと考えられる。 図1 |
京都新聞(11月30日 29面)、産経新聞(11月30日 26面)、日刊工業新聞(11月30日 32面)及び毎日新聞(11月30日 3面)に掲載されました。 |